スタチンは、言わずと知れた高コレステロール血症の治療薬。
脂質異常症を改善し、動脈硬化の進展を抑え、心血管疾患(心筋梗塞など)、脳卒中など各種疾患の発症・進展を予防することを目的として、高齢者でも多く使用されている薬である。
その心血管疾患においては、血圧や喫煙などさまざまなリスクファクターがあるが、その一つに「フレイル(虚弱)」が挙げられている。
しかし、高齢者において、スタチンを用いた治療が、フレイルの予防に関連するかどうかはこれまで明らかになっていない。
ということで、
本研究は高齢者におけるフレイル(虚弱)の予防に関わるかどうかということについての報告。
Qazi S, et al. Statins and survival free of incident frailty among older US veterans.
Eur Heart J. 2026 Jun 10:ehag451. doi: 10.1093/eurheartj/ehag451. Epub ahead of print. PMID: 42264468.
[PubMed] Statins and survival free of incident frailty among older US veterans
研究デザインは、米国Veterans Affairs(VA)データベース(2002-2018)とMedicare・Medicaidデータを用いた後ろ向きコホート研究。
対象としては、67歳以上の退役軍人で、それまでにスタチンを使用したことがない退役軍人。研究開始時点でフレイルと判定(フレイル判定には、31項目からなるVeterans Affairs Frailty Index(VA-FI)を適用)された人は除外され、Medicare・Medicaidの医療情報とのリンクによる解析。
結果は以下の通り。
本研究の対象となった退役軍人987,301名(年齢72±6歳、男性98%、白人87%)のうち、290,729名が研究期間中にスタチン投与を開始した。
平均5.3年(標準偏差4.1年)の追跡期間中、636,195件のフレイル発症が認められ、未調整の発生率は、
スタチン投与開始群で1000人年あたり153.1件
非投与群で1000人年あたり111.4件
であった。
PSW(傾向スコア重み付け)による調整後、
スタチン投与開始群は非投与群と比較して、フレイル発症のリスクが低いことが示された(HR0.76、95%CI 0.75–0.76)。
さらに、フレイル予備群(プレフレイル)の退役軍人においても、同様の結果が認められたという。
すなわち、完全に健常な段階からだけでなく、フレイルの初期段階にある人でも、スタチン開始によるフレイル予防への介入効果が期待できる可能性がある、と示唆されている。
もちろん、
本研究は大規模な研究であって、この結果は非常に重要だし興味深いが、
この結果をもって、例えば「日本人でも女性でも誰でもフレイル予防したい高齢者にはスタチンを内服してもらえばOK」とはならないので、引き続き検討が必要である。
とは言え、
これまでに、スタチンにはLDLコレステロール低下作用に加え、抗炎症作用、血管内皮機能改善、酸化ストレス軽減、プラーク安定化といった、多面的(pleiotropic)作用があると報告されており、これらがフレイル進展の抑制につながった可能性があるのかもしれない。
我々が外来で、脂質異常症を指摘された患者さんに内服治療を勧めても、
「コレステロールの薬を飲み始めたらずっと飲まなくちゃいけないんでしょ? だったら飲みたくない」
という、”あるある”な話の中で、
コレステロールの数値にとどまらない、”血管の健康”を守っていくための一つの方法として、スタチンによる治療開始を含めた対応を、今後もご相談していきたいと思う。

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