2025年11月15日土曜日

【recri】オペラ「ヴォツェック」@新国立劇場

アルバン・ベルク作曲のオペラ「ヴォツェック」。
今年は、このオペラの初演から100年となる記念の年なのだそうだ。
recriからの提案にあったこのオペラ、リチャード・ジョーンズ氏の演出による新制作。
ということでこれをチョイスして観に行っことに。

いやーアルバン・ベルクですよ。ていうか「ヴォツェック」初めて観るし。大丈夫か私。



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いや何か、なんて言うんだろうか。

幕が下りて、拍手喝采の後に退場する観客のみなさん、言葉少なであったように感じた。悪い意味ではなく。

おそらく、解釈して、咀嚼するのに少し時間がかかるかもしれない。
無調のオペラ。

舞台設定は、どこかの(戦時中の)街。
主人公のヴォツェックは貧しさの中、上司からひどい扱いを受け、人体実験の被験者にもなり(!)、精神を病んでいく。
内縁の妻マリーは、観客が感情移入できそうな状況(ほんとか)で不倫し、それを悔い、やがてしかし悲劇的な死に至る・・。
主演のこの二人、ヴォツェック役のトーマス・ヨハネス・マイヤー、マリー役のジェニファー・デイヴィスが哀感迫る歌唱と演技で素晴らしい。
他のキャストもはまっていたように思う。
児童合唱団の皆さんもとても良かったです。

アルバンベルクが緻密に構成した3幕の短いオペラ(全体で1時間40分ほど)。
もちろん私はそれを理解できるほど音楽に詳しくない(というか素人)なので、ところどころのモチーフとか、ああこれがSprechstimmeかとか程度しか聞き取れなかったわけだが(すみませんすみません)、

それでも、畳み掛けるように重奏する音と声が、
極度にシンプルながら、人(黒子のような)の手によって移動する舞台装置、そして黄や赤を基調とする衣装や照明によって、

生と死、権力と服従、現実と妄想、聖なるものの遠さ、などを描きだしていく。

ネタバレになるので控えるが、第3幕5場はあっと息を呑む演出。(賛否あるようだ)


個人的には、第2幕4場の群衆はなんとなくこじんまりとして見えたが、それがきっと狙いなのかと・・。
長方形、三角形、円形、などの図形が舞台上に展開されるのも面白かったが、「血糊」は妙にリアルに見え、そこから現実へとつながる何かが突きつけられた気がした。


ほかのいわゆる「普通の」オペラのように、何かの旋律にカタルシスを感じるようなことはないこのオペラ、
しかし心に突きつけてきたものは大きい。
貧困と精神、そして闇。


今回は新国立劇場の4階(recriさんの特別割引のチケットなので)。オペラハウスの4階は今まで来たことがなかった(多分)ので、入り方でちょっと迷った(階段の場所がややわかりにくかった)。
4階前方の席で、見切れあり。オケピは見えない。今回は後方席に人がいなかったので、途中どうしても少し乗り出して観た(そうしないといい場面なのに舞台前方が見えない)時もあったが、基本的にはやはり4階はリピーターとして、あるいは音が聞こえればいい時向けだな。

(文中、敬称略)

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