2025年5月17日土曜日

「高齢社会における運転技能・運転環境シンポジウム」

東京都医師会主催「高齢社会における運転技能・運転環境シンポジウム」を聴講した。

高齢者にとって運転は、多くの場合生活上の必要と関係している。

高齢者による事故は報道で目立ち、そのつど、大きな非難や心配の的になっていることが多いが、

一方で、免許証返納が認知機能の低下や社会参加の減少につながってしまうことも報告されている。


今回のシンポジウムでは3題の講演により、
高齢者の運転において注意すべき点の指摘と同時に、
高齢になっても安全に運転できる「運転寿命」をどのように延ばしていくかという取り組みが紹介されていた。

高齢者の運転では、
「右折・左折でふくらむ」
「カーブでの減速が不適切」
「進路変更時に必要な行為が抜け落ちる(安全確認しないなど)」
などの問題点が挙げられるとのこと。

一方、高齢者では(若年者でもだが)「夜間・雨天などは運転しない」「高速道路には乗らない」「危ない車には近づかない」など、制限した運転、すなわち余裕のある運転(補償運転)を心がけている人も多いそう。

また別の問題点として、

運転能力の自己評価と、他人からの評価が違っている例(つまり、自分は大丈夫と思いながら危ない運転をしている人)が多く、
「自分は大丈夫」と思っている人ほど安全運転をしない傾向があると。

なので、自分の運転を振り返り、自覚することが大切であると述べられていた。

ただし、

軽度認知障害の高齢者(80歳代)に短期間、教習所でのトレーニングを行うと、非常に大きな行動変容(運転行動の改善)が起こったとの報告があり、興味深かった。

従って、
高齢者全体に対する運転リスクの予防と同時に、リスクのある個人に対する個別の訓練を行うことに効果が期待されるだろうとのこと。

そして、「運転のやめどき」について。

これは我々医師も、その方の健康状態などを見て、判断していかなければならない場面があるだろう(今回の医師会の講演会の中で、そのように医師に向けて呼びかけられていた)。

いつまで運転するか、
そのためにはどのようにリスクを評価し、安全に運転できる状況を確保していくか、
家族も含めて相談することが必要であろう(自動運転の実用化などによる高齢者の移動手段確保も必要だが)。

また、
西葛西・井上眼科病院の國松先生(眼科医)は、緑内障と運転との関わりについて、事例を挙げて講演下さった。

緑内障は視野が欠ける疾患であり、進行するまで自覚症状が出にくい。
しかし、視野と視力とは異なるので、「自分は視力がいいから眼は大丈夫」と思って運転している人も多い。

ということで、講演中で紹介された下記の動画をシェアしておきます。

わかりやすいので、ぜひ一度ご覧ください。



私も、嘱託産業医として訪問している事業所などでは、
ときどき衛生講話の中で、「目の健診」についてお話をすることがある。

"40歳になったら、自覚症状がなくても(自分はよく見えていると思っていても)、一度、眼底や視野の検査を受けてみましょう。"

"また、人間ドックなどで眼底検査に何らかの異常所見が指摘されたら、
放置せず、眼科を受診してみましょう。(放置している人が多いです!!!)"

と、

今後も話していこうと思う。


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