2026年9月23日水曜日

COVID-19罹患と認知症発症リスク

いわゆる「コロナ禍」が収束した、とされて数年が経つ。

が、コロナウイルス感染症COVID-19は、なくなったわけではない。

今も外来では、発熱や咳で受診され、検査で「コロナ陽性」になる方が引き続きみられている。


COVID-19の症状としては、上記のような急性の呼吸器症状が多いわけだが、

咳などがおさまっても、コロナウイルスがもっと長期的な影響を心身に及ぼす可能性があることもわかっている。


そのようなコロナ後遺症(Long COVID)の症状の一つとして、

いわゆるブレインフォグbrain fog(集中できない・記憶できないなど、頭の中に霧がかかったようにぼーっとしてしまう症状)を含む認知機能への影響が起こりうることも、すでによく知られている。


では、コロナ感染で、その後の実際の認知症発症リスクは上昇しているのだろうか?



ということで見ていたら、比較的最近のメタ解析があったのでざっと読んでみた。

Zhang Q, et al. Risk of new-onset dementia following COVID-19 infection: a systematic review and meta-analysis. Age Ageing. 2025;54(3):afaf046. 

PubMed


COVID-19罹患後の新規認知症発症リスクを検討したシステマティックレビュー・メタ解析である。

解析方法としては、PubMed、Embase、Web of Scienceにおいて、データベース開設時から2023年11月9日までに発表された研究を検索。

COVID-19罹患者と非罹患者等を比較し、その後の新規認知症発症を検討した成人のコホート研究または症例対照研究を対象としている。

最終的には15件の研究、計26,408,378人分のデータを採用し、そのすべてが後ろ向きコホート研究であった。COVID-19罹患者は1,992,277人、比較対象者は24,416,101人であった。

既存の認知症・認知機能障害を有する患者は除外され、主要アウトカムはCOVID-19罹患後の新規認知症発症の評価としている。


その結果、

COVID-19罹患者は比較対照群と比べ、その後に新規認知症と診断されるハザードが有意に高かった(HR 1.49, 95%CI 1.33–1.68)。

すなわち相対的には、COVID-19罹患後の新規認知症診断のハザードが49%高かった、ということになる。


比較対象別にみると、

非COVID-19群や他の呼吸器感染症群との比較では、いずれもCOVID-19群で有意な上昇を認めた。

しかし、インフルエンザや敗血症を比較対象とした場合には、統計学的に有意なリスク上昇は確認されなかった。このことから、他の呼吸器感染症と比べ、COVID-19やインフルエンザ・敗血症はより神経や微小血管に対する影響が強く、認知機能低下へのインパクトが大きいのだろうと議論されている。


年齢別解析では、65歳以上においてHR 1.68(95%CI 1.48–1.90)と、新規認知症診断のハザード上昇を認めたが、18~64歳ではHR 1.35(95%CI 0.86–2.12)であり、統計学的に有意ではなかった。ただし65歳以上と18~64歳のサブグループ間の差自体は統計学的に有意ではなく、COVID-19の影響は高齢者に特異的とまでは結論できなかった。よって、若年者でもCOVID-19によって認知機能が低下する可能性が示唆されている。

今回、追跡期間別の解析では、COVID-19罹患後3~24か月にわたって認知症リスク上昇との関連が認められており、より長い期間での観察が求められている。


今回の報告は後ろ向きコホート研究の解析で、COVID-19罹患歴と、その後の新規認知症診断との関連とをみた観察研究であり、

直接「COVID-19が認知症を○○%増加させた」という因果関係ではないことに注意が必要であろう。

研究によるばらつき(対象や診断方法、追跡期間など)が非常に大きかったとも指摘されている。

さらに、今回の「認知症の新規発症」が、コロナ感染によって生じたのか、もともとあった認知症がコロナによって悪化して顕在化したのか、それとも(たまたま)コロナで病院受診したから認知症と診断がついたのか・・などは必ずしも確認できない。

また、コロナだからというよりも、「呼吸状態が悪化して入院した」ことで認知機能が低下したのかもしれない、とも言える。


ただし、

COVID-19罹患後、とりわけ高齢者や入院を要した患者において認知機能の変化が認められた場合、単なる加齢や一時的な体調不良というよりは、やはりCOVID-19罹患との関連も考慮されるべきであろう。


ということで、本研究の結論は、

COVID-19感染と、認知症新規発症のリスク上昇との関連が認められた

となっている。



ちなみにちょっと別の視点になるが、

もう少し最近の興味深い報告として、北欧からのLong COVIDに関する下記の報告もある。


Christensen JFMM, et al. Cognitive sequelae in post-COVID-syndrome: a Danish-Swedish case-control study. Infect Dis (Lond). 2026;58(1):85-98. 

PubMed

こちらはデンマーク・スウェーデンで行われた症例対照研究。

Long COVID(post-COVID syndrome:PCS)患者181人と、COVID-19から完全に回復した対照155人を比較し、客観的な認知機能検査を実施した。

その結果、PCS患者ではすべての認知領域で成績低下がみられ、特に情報処理速度(processing speed)の低下が目立った。ただし、その差は小さく、著者らは「臨床的意義は限定的」としている。また、パンデミック初期に感染した患者ほど認知機能低下が大きい傾向が認められた。

ということで、

認知症とまではいかなくても、Long COVIDでは客観的に軽度の認知機能低下、とりわけ処理速度の低下が残存し得るという報告。これと同様の報告がやはりスウェーデンから出ている(PubMed)ので、そういった傾向はあるのだろう。


いずれにしても、COVID-19にかからないに越したことはない。



接種できる人には、日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会が推奨している通り、最新のウイルス株に対応したワクチン接種のご検討をお勧めします。











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