イ・オクソン著、清水知佐子訳「老後ひとり、暮らしています」(CEメディアハウス,2025)読了。
話題作「女ふたり、暮らしています」の作者キム・ハナさんのお母様によるエッセイ。とは言え私は、女ふたり・・は未読なのであるが、
年代的に「老後ひとり」の方が近いため(汗)、へえこんなタイトルが・・と興味を持ち、読んでみた。
著者は専業主婦。
詩人で大学教授だった夫と死別し、子供も独立したため、今は釜山での一人暮らしを謳歌している。
この本は、娘に勧められて書いたという。
豊富な読書量からくる幅広い知識と、ユーモアがありながらピリ辛な文体で、主婦の目線から日々の暮らしを綴るこの本は、韓国の書店でのランキングを席巻したということだ。
確かに、読んでいて小気味良く、「こんな風に老後(?)を暮らせたらな」と思うような暮らしの様子が語られる。
満75歳の毎日。
例えば、
「蓄えがたっぷりあるわけではないが、 とにかく飢え死にする心配はない」という状況での一人暮らしで、
「私は今、何の心配もない人生最高の時期を過ごしている」
という著者。
具体的には、
「一週間に三回ヨガに行き、一日は友達と山に登り、 日曜日にはスポーツクラブに行く」ような生活らしい。
加えて著者は、毎日公衆浴場(いわゆるチムジルバン?)に通い、
そしてまたたくさんの本を読んだり、 YouTubeで大学教授の講義を見て学んだりと、
いいなあ。
この本が韓国で人気を博したというのも、
闊達で軽妙な言葉遣いはもちろんだが、
こんなふうに歳を重ね、こんなふうに高齢期を過ごせたらという、憧れ、 もしくは目標のようなものを見出せるからではないかと、うなずけるものがあった。
個人的には、 韓国の一般家庭での風習についての記述も興味深かった。
自国の読者を想定している本のため、 訳註以外の詳しい説明はないのだが、
例えば「時祀(シサ)」とは、陰暦10月に5代以上の先祖をまつる行事なのかとか
「祭祀(チェサ)」というのはいわゆる法事なのか・・とか、
混乱しそうになりながらも、でもハングルではなく、翻訳なので漢字になっているのがちょっと助かる。
高齢期にこのように自立して、日々自分を新しくして過ごそうとするにはそれなりにパワーが必要であり、
そのためには、若い頃からの心身と人間関係のメンテナンスが必要であるが、
それを心がけたとしても、人生何があるかわからず、誰しもが望むような高齢期を過ごせるわけではない。
とは言え、今や人生100年時代。アラ還でもまだ道半ばをちょっと過ぎたくらい、と言えるかもしれない。
この先もできるだけなめらかに日々の暮らしを綴れるように、自分にできることを少しずつ積み重ねていきたいと思う。
(前略)老衰し、私の周りのすべてのことが変化し、私の理解できない世の中になった時に人生の終止符を打つ。それもまた幸せなことかもしれない。(本文より引用)
0 件のコメント:
コメントを投稿