「高層階で急性疾患が発症すると、そうでない場所で発生した場合に比べて死亡率が高い」
というような話を聞くことがある。
2016年2月3日 あなたの健康百科 by メディカルトリビューン 高層階の住人に多い心臓停止死、25階以上は生存率ゼロ[yomiDr 読売新聞]
まあそういうこともあるだろうな・・と思っていたところ、
たまたま総説を見つけたので読んでみた。
Ming Xuan Han et al.
Cardiac Arrest Occurring in High-Rise Buildings: A Scoping Review
J Clin Med. 2021;10(20):4684. doi: 10.3390/jcm10204684
Cardiac Arrest Occurring in High-Rise Buildings: A Scoping Review
「高層階(病院外)」「心停止」などのキーワードを元に、過去の医学文献を検索した解析である。さまざまな条件にょって、最終的に解析対象になったのは23文献。
その文献のほとんどは北米大陸のもので、一部が東アジア(特に韓国)と欧州から。
ふむふむ、と読んでみたところ、
高層階では
「居合わせる人」(bystander)がいなかったり、AEDが使用しにくかったり、
救急チーム(Emergency Medical Services)の到着が遅れたり
十分は心肺蘇生が迅速に提供できなかったり
・・などの理由から、
やはり自発呼吸への復帰や、
生存しての退院、神経学的に良好な状態での生存、などの指標に対して、
高層階で低くなるという報告が多くみられた。
まあそうかもしれないですよね・・・
と思ったのだが、よく見ると、
「高層階」(high-rise buildings/settings)というのが、
想像していた、いわゆる高層ビルディング
・・・ではなくて、
「3階以上」
とか
あるいは
「ground floor (1階)とそれより上との比較」
とかであったりしたのである。
つまり、
少しでも階段だのエレベーターだのを使って上に行く場合、リスクが高くなるということであるようだ。
(ちなみに、地下も比べていた論文があったが、地下でも生存率は低下するようだ)
著者らは、このような状況を改善するために、高層階での救急医療に関わる人やシステムに対して、
1. 緊急事態時のエレベーターの優先利用
2. 治療機会を逃さず、その場で可能な最大限の治療を行う
3. 一般の方への初期救急処置の啓発
4. 建築物について、「エネルギー効率評価」と同じような「健康に関わる評価」を行う
5. 高層階独自の病院外医療に関するデータ集積
などを提案している。
ぜひ高層階の関係者の方々、ご検討をお願いします。
いや、東京スカイツリーとか東京タワーとか渋谷スカイとかに行って倒れないようにしないと・・(極端な例
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