2026年10月24日土曜日

小児喘息の寛解歴を有する成人における呼吸機能の加速度的低下

広島で開催中の日本禁煙学会にて、

広島大学呼吸器内科の岩本教授による特別講演

「喘息・COPDの自然歴から考える―喫煙と呼吸機能低下の予防」

を聴講。


 小児喘息は生後まもなくから小学生くらいにかけて症状があり、患者さんは小児科に通院することとなるが、

その後治療および成長によって症状が軽快(臨床的寛解)し、思春期・青年期になると、小児科にも内科にも通院しなくなる時期がある。

それは、治療の進歩によって多くの患者さんで喘息症状が軽快(およそ半数が寛解)するからであるが、もう一つは、受験や部活など、生活環境が変化するために通院しなくなる、ということもあるだろう。

 

そうなれば、他に病気を持っていない限りは少なくとも何年間か、医療機関との接点がない期間が続き、この期間は(医療機関にとって)「ブラックボックス」であるというわけだ。


小児喘息が寛解した患者さんのその後はどうなるかと言えば、

一部は、小児期から成人期へ、症状を持ち越す(喘息が続く)パターン。この場合はブラックボックスではなく、通院が続く。

しかし、

成人後に気管支喘息を発症、あるいは再燃する方々もいる。

 

岩本教授は、

"小児喘息は、たとえ症状が寛解しても、気道炎症や気道過敏性が残存し、呼吸機能低下リスクとなる可能性がある"と警鐘を鳴らす。特に成人近くになって吸い始めるタバコが、その誘因や悪化要因となる。


ということで、

今回は広島大学の研究チームによる論文、

Miura S, et al. Accelerated decline in lung function in adults with a history of remitted childhood asthma. Eur Respir J;59(1):2100305.

原著論文リンク

という報告が紹介された。


本研究は、小児喘息が寛解し、成人後に喘息症状がない人において、加齢に伴う呼吸機能低下が促進されるかを検討したもの。

具体的には、健診を受診された成人3,584人(35~65歳(平均48.1歳)、小児喘息寛解群121人、喘息のない健常対照群3463人)を対象に、平均5.3年間の呼吸機能の変化を追跡している。

いずれも、研究開始時には成人喘息や他の肺疾患がなく、呼吸機能も正常であった。これら対象者における呼吸機能(1秒量(FEV₁)、努力肺活量(FVC)、1秒率(FEV₁/FVC))の経年的変化を比較した。


この結果、


- 小児喘息寛解群では、健常対照群より、FEV₁とFVCの年間低下量が有意に大きかった(=呼吸機能の低下が大きかった)。この関連は、交絡因子を考慮した多変量解析や傾向スコア調整後も認められた。

- 小児喘息の寛解歴と喫煙は、それぞれ独立してFEV₁・FVCの急速な低下と関連していた。小児喘息の既往に喫煙が加わると、呼吸機能の低下はさらに加速された。

- 喫煙はFEV₁/FVCの急速な低下とも独立して関連していた。

ということで、

小児喘息は、臨床的に寛解しても、成人後の呼吸機能に長期的な影響を及ぼす可能性がある。すなわち、小児喘息は、症状が良くなって寛解していても、必ずしも将来の呼吸機能低下リスクの消失を意味しない。

- 小児喘息の既往がある成人では、無症状でも呼吸機能の経年的評価が重要となる可能性がある。

- 喫煙が加わることで、閉塞性肺疾患の発症リスクがさらに高まる可能性がある。


本研究の限界として、本研究が観察研究であり、小児喘息の既往と呼吸機能低下の因果関係を直接証明したものではないこと、また小児喘息歴は自己申告に基づいていることが挙げられているが、

まとめると、講演の最後に岩本教授が強調されていたように、


「小児喘息の寛解は治癒ではない」


のである。

 

小児喘息があった方は、

タバコはダメ絶対(加熱式タバコやシーシャ、受動喫煙も含め)。

それから、一度は呼吸機能検査を受けることが勧められていたので、私からもささやかながらお勧めしておく。健診のオプションなどあれば一度は。


喘息は症状のことではなく気道の慢性炎症なのである。





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