2026年5月6日水曜日

こどものYouTube利用と問題行動との関連

「デジタル脳腐敗」という言葉がある。

脳の腐敗 Brain rot:2024年、オックスフォード大学の「今年の言葉」に選ばれた言葉。

‘Brain rot’ named Oxford Word of the Year 2024

上記の記事によれば、brain rotは

"取るに足らない、あるいは刺激のない(簡単すぎる)情報(現在では特にオンラインコンテンツ)を過剰に消費した結果として生じる、ひとの精神的または知的状態の悪化"

と定義され、また"そのような悪化につながる可能性のあるもの"も含まれる。

この文脈で最近、話題というか問題となっているのが、こどもとネット動画、特にいわゆるショート動画との関連である。

SNSの「おすすめ」によって次々に流れてくる低品質なショート動画を(受動的に)多く見ていることが、いずれその子どもの脳に悪影響を及ぼすのではないか・・と危惧されているのだ。

Yahoo!ニュース「ショート動画中毒」が深刻すぎる…脳科学が解明した“集中力低下”の恐ろしすぎる正体 1/5(月)

もちろん「脳腐敗」といった言葉は、現時点で医学的に定まった概念ではない。しかし、すでに各国の公的機関からは、未成年者のSNS使用を制限する方向性が打ち出されている。将来的な認知機能や知的活動の低下の可能性を考えれば、我が国でも議論や対策を急ぐべきところであろう。


というところで、こどもとネット動画との関連についての文献を一つご紹介。


Kim D, Lee S, Kim H, Shin Y. From temperament to YouTube: exploring the link between childhood temperament, YouTube usage patterns, and emotional/behavioral problems among children. BMC Public Health. 2024;24(1):1547. doi: 10.1186/s12889-024-19011-w. PMID: 38849777; PMCID: PMC11161939.

PubMed

韓国からの報告。小児期のYouTube使用状況と、その後の情緒や行動麺での問題との関連について調査したものである。


韓国において、ネット依存症のリスク因子を把握するための、小児を対象とした前向きコホート(The Kids Cohort for Understanding of Internet Addiction Risk Factors in Early Childhood (K-CURE) があり、乳幼児期からのメディア(ネット)暴露がその後に及ぼす影響を長期にわたり観察しているという。

ここに参加した2-5歳児はその後発達について追跡されるが、2018年から調査項目としてYouTubeの使用状況が追加されたそうでさる。

ということで、今回はこの小児のコホートでの研究。

本研究では、195名の8-11歳の子どもを対象としている。

2018年に、当時5〜8歳であった子どもたちの気質を調査。さらにその3年後、8-11歳になったこどもたちにYouTube視聴状況を尋ね、よく見るチャンネルの他、最初にYouTubeを見始めた年齢と、その後の視聴パターン(頻度、持続時間)も調査した。

また療育者(主に母親)が、児童精神保健センターへの来所時に自主的に研究へ参加し、詳細な自記式質問票に回答。その回答などを用い、小児期早期の気質として4つの尺度:新奇性の追求、侵害の回避、報酬への依存、持続性という、生涯安定な側面を測定した。

こどもたちの情緒的問題あるいは問題行動については、 内的および外的な問題行動のチェックリスト(韓国版)(the Korean version of the child Behavior Checklist (K-CBCL) )のスコアを用い、評価した。【参考:Wikipedia:子どもの行動チェックリスト 】

これらのデータは、度数分析、相関分析、および重回帰分析を用いて解析された。


その結果、

21.0%の子どもが4歳以前にYouTubeの利用を開始しており、最も多い開始年齢は8〜9歳(30.3%)であった。これらの子どもは、平均して週4.8日、1日あたり68.5分、YouTubeを利用していた。

そして、

⚫︎「幼児期の持続性(persistence)は、その後のYouTube利用時間と負の関連を示していた。」

ここで持続性(persistence)とは、

"報酬が得られない状況でも努力を続ける傾向を指す。持続性が高い人は勤勉で安定していると見なされる一方、持続性が低い人は怠惰で不安定であると見なされる。"(本論文より)

つまり、

持続性が低い(努力を続ける傾向が低い)→その後、YouTube を長時間見るようになる

ということになる。


⚫︎「初めてYouTubeを使用した年齢は、その後の利用頻度と負の相関を示していた。」

つまり、早期にYouTubeの使用を開始する→その後、より多くYouTubeを利用する,ということになる。


さらに、

⚫︎「YouTubeの利用開始年齢が低いほど、またYouTubeを使う頻度が高いほど、情緒的・行動的問題の増加と有意に関連していた。」

という結果であった。

なお、頻度ではなく視聴時間(どのくらい長く見たか)については、今回の研究ではYouTube視聴時間の長さと情緒的・行動上の問題とは逆相関していたという。これは一見、これまでの報告と逆であり予想外の結果であるが、上記のスコアとの相関は見られなかった。これについては少数の、極端にYouTube使用時間の長い群があったことが全体の傾向に影響したのだろうと述べられており、さらなる調査が必要そうだ。


以上の結果より、本研究の結論として、

"ユーザーの好みに基づいてコンテンツが自動的に推奨されるYouTube環境では、利用パターンに関連する特性が持続性と結びつき、それが自己制御につながる可能性がある。

子どもたちがスマートフォンを頻繁に使用し、コンテンツを非常に短い時間しか見ないという現在の傾向を考慮すると、

今回の研究結果は、発達段階にある子どもたちのメディア利用における自己制御の重要性を強調するものだ"

と述べられている。


今後も注視が必要な問題だと思う。








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