2026年5月14日木曜日

「機械学習モデルを用いた、膵臓癌におけるリスク因子分析の臨床的意義」

先日たまたま読んだ論文。
読んでみて、うーん・・と思ったけれどご紹介。

Sherchan A, et al. (2025) Clinical significance of risk factor analysis in pancreatic cancer by using supervised model of machine learning. Front. Med. 12:1551926. doi: 10.3389/fmed.2025.1551926

PubMed

何かと言うと、「膵癌を予測するリスク因子」を、機械学習を用いて作ろうとしたという報告。


今回、

膵癌と診断された患者353名(発症時の年齢中央値68.0歳、男女比1.46:1)と、

性・年齢を(ほぼ)一致させた対照群379名(同時期に骨折で整形外科に入院していた患者;発症時年齢中央値68.0歳、男女比1:1.24)を対象として、

性別、年齢・BMIをはじめ、飲酒や喫煙などの生活習慣、合併症や既往歴、そして脂質や肝機能などの臨床検査値を調査し、

これらのデータを、機械学習を用いて階層化し、多変量ロシスティック回帰分析で「膵癌を予測するモデル」を解析した、というもの。

なお機械学習や統計処理の詳細については、私に〜聞かないでください〜(←秋川雅史の声で)


解析の結果、


本研究において、最終的な多変量ロジスティック回帰モデルに残った主要な予測因子は、以下であったという。

HbA1c(OR 1.28、95% CI:1.08~1.52)

アルカリホスファターゼ(ALP)(OR 1.02、95% CI:1.01~1.03)

CA19-9(OR 1.01、95% CI:1.01~1.01)

癌胎児性抗原(CEA)(OR 1.41、95% CI:1.20~1.66)

体格指数(BMI)(OR 0.88、95% CI:0.81~0.97)


HbA1cからCEA までは、高値だと膵癌リスクが上昇(例えば、"HbA1c (ご存知、頭代謝の指標)が1ユニット高ければ、膵癌リスクが28%高くなる")が、BMIについては高いと逆にリスクが低下、ということはBMIが低い方がリスクが高い、という結果である。


ということで、

“最終モデルは、高い精度、感度、特異度を備え、優れた診断性能(AUC = 0.969、p< 0.001)を示した。”

と述べられている。

なお、喫煙、飲酒、年齢、糖尿病既往歴、膵癌の家族歴などは、今回の機械学習による予測因子としては抽出されなかったと。



・・・


・・・いやまあ、そうだよね・・・



つまり、

今回抽出された上記の因子は、「膵癌の発症を予測するもの」ではなく、

すでに膵癌が発症している場合に起こりやすい変化を見ている(=膵癌のバイオマーカー)である、

ということになるかと。

例えばBMIについては、過去の論文では逆の結果の報告もあるが、著者らは「今回の解析に参加した膵癌患者は、解析の段階で癌が進行していた」と記載しているので(論文参照)、初期の膵癌の予測ということには、今回の結果からはならないようだ。


もうちょっとこう、「膵癌発症○年前に、こんなデータのこんな変化があった」とかいう解析があれば。

とはいえ、膵癌に関しては、「なりやすい要因」がすでに報告されている。

例えば、家族に膵癌になった人がいる人や、健診や人間ドックで「膵臓に嚢胞(のうほう)があります」と言われた人などは、ちょっと注意して定期的に検査を受けるなどされた方が良いと思われる。

参考:国立がん研究センターがん情報サービス 膵臓がん 予防・検診


ではあるが、

個人的には、予測ではなく早期発見のためだとしても、

少なくとも「膵癌」「膵臓の病気」に注意を向けてもらえるものであれば、

上記の論文で得られたような情報を役立てたいし、今後も注目していきたいと思う。



<以下、内科医のひとりごと>




ただまあ、人間ドックで腫瘍マーカーを測定するのは(一部を除き)意味がない(むしろ余計な心配や医療費増加のもとになる)と思っているので、お勧めしません。偽陽性や偽陰性が多くて、それだけで「がん」と診断できたり推測したりできるものではないわけで。がんはないのに「腫瘍マーカーがちょっと高くて心配だから」と、えんえんと(本来不要な)(被曝の恐れもある)検査を受けている方をたまに見かけるが、いろいろと残念に思う。

人間ドックなどでは、膵臓に限らず、癌が心配なら腫瘍マーカーではなく画像検査のオプションをお受けになった方が・・・とは思う。ていうか、がんが心配なら、まずそのタバコ(加熱式・電子・シーシャ含む)や酒をですね(以下略

参考:国立がん研究センターがん情報サービス がん検診について


でも、健診施設では、希望者が多いから腫瘍マーカーのオプションを自施設だけやめるわけにいかないんだろうな、とも考える。不要と説明すれば、苦情が来る(もしくはSNSにさらされる)だろうし・・忸怩たる思いではあるが、難しいですね・・・




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