以前の記事で、"「ハムレット」の舞台をどこかで観たい"と言っていた私。
このたびついに(?)一つ観てきた。
(以下の感想にはネタバレがあるので、未見の方はここでストップを)
主演のハムレットは、歌舞伎俳優の片岡千之助さん・・・のことはよく知らなかったのだが(すみません)
今回は「音楽劇」とあるように、
"ルネサンス・バロック音楽のスペシャリストを集め、シェイクスピア活躍当時の楽曲を劇中音楽として生演奏でお楽しみいただく贅沢な趣向"(公式サイトより引用)
ということで、中世音楽好き(but全然詳しくない)の私としては、これは聴きたい! いや観たい!!という気持ちが盛り上がり、チケットを取ったのであった。
ということで新国立劇場小劇場へ。
舞台はデンマーク王の城内の場面から始まる。(歩哨の場面が後に来る)
舞台上手側の奥の方に、リュート、リコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバを演奏する方々がひっそりとシルエットのように見えており、
そこで奏でられるルネサンスの音楽が、舞台を展開させていく。
物語はもちろん「ハムレット」の原典に沿ったストーリーの短縮版。
悲劇が刻々と進行する。
みなさん熱演。
・・・なのだけど、
なんだろう、
何かどうも、観終わって「ルネサンス音楽でシェイクスピアのハムレットを観た!」といった印象というか満足感が今ひとつ薄い気がする・・・
なんだろう。
演劇鑑賞には素人の私なので恐縮なのですが、何というかすこーし「浅い」気がしてしまった、のである。
ハムレットは30歳くらいのデンマーク王子であって、
先代王の長子として育てられ、ということは英才教育を受け、大学では留学もしていたわけで、
今回の悲劇に及ぶまでに、さまざまな心理的・社会的そして宗教的な葛藤を抱いていたはず。
そのあたりがおそらく、今回の俳優(歌舞伎役者)さんがハムレットを演るには、まだもう少し時間が必要かなと思える所以なのかもしれない。
ハムレットのみならず、他の若手の皆さんもであるが。いや熱演だったし良かったとは思うのだが、なんというかまだちょっと平坦なところがあったかなと(すみませんすみません)。
あと
亡霊の声、あれは生声でやってもよかったんじゃないかな・・・変にそこだけ響いていた感じ。アニメのラスボスの声というかダースベイダー感というか。なんなら足元にスモークとか焚いて実物(って言うのか?)に登場してもらってもよかった。
音楽や劇中劇は確かに面白い企画で、特に劇中劇で歌舞伎口跡が出てきたのにはびっくりしたが、「この時代の演劇体験は、私たちが今こうやって歌舞伎を聞くような感じだったのかな」などと想像できて新鮮であった。
ではあるが、
オフィーリアが急に「グリーンスリーブス」を歌い始め・・・いや歌も上手だし表現もよかったのではあるが、
ここでグリーンスリーブスでなくてもよかったのではないかと・・・
現代の我々の耳にも馴染みすぎているメロディ(なんだったか忘れたけれど、テレビコマーシャルとかでも使われていませんでしたっけ?)が入ってくると、そこで一気に持って行かれてしまうのである・・・何がどこに持って行かれるのかはわからないが、 16世紀のデンマークの城(エルシノア城か)から外れていく感覚というか、印象の強さにおいてグリーンスリーブス>>>>ルネサンス音楽というか。
ここは、少なくとも観客の日本人があまり知らない調律のルネサンス音楽にしておいたらよかったのではないかと。
ところで、To be or not to beの例のセリフ、これまでの他の舞台(というか脚本)とはやや違う訳になっていた。
このエリフを舞台上で、説得力とある種の狂気を持った圧倒的な言葉として発することができるよう、千之助さん始め若手の役者の皆さんの今後に期待しています。
新国立劇場小劇場、今回は後方センターだったのだが、段差はあるものの千鳥になっていない座席配置で、前の方の頭が舞台にかぶってしまって正面が見えづらかった(涙)。
今度行く時は通路側にしようと心に誓いました・・・
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