マトリ。
麻薬取締官。
ふだん、あまり意識することのない職種だと思う。
先日、たばこやシーシャの関連から薬物の話になり、薬物依存にも詳しい管理栄養士のM先生から、この本をお借りしたのであった。
お借りしてすぐブックカバー(某文具イベントで買ったお気に入りの)をかけてしまったので気づいていなかったのだが、この帯の写真の男性、誰?俳優さん?かと思ったら著者ご本人であった。
瀬戸晴海氏。明治薬科大学薬学部卒、1980年に厚生省麻薬取締官事務所(当時)採用。以後一貫して薬物捜査に取り組み、各所で麻薬取締部長を歴任後、2018年に退官。退官後も「国際麻薬情報フォーラム」などでご活躍のようである。
この本は、第1章「『マトリ』とは何か」から始まり、
瀬戸氏がこれまでに取り組んできた麻薬、覚醒剤、大麻、危険度ドラッグなどの摘発や取り締まりの状況、
暴力団やイラン人、近年ではネットやSNS、闇サイトなどを介して広がる薬物汚染、
そして、特段の罪悪感も問題意識もなく気軽にクスリを買って使う「"普通の"若者の姿など、まさに現場の最前線で指揮を執ってきた取締官の業務記録であり、また我が国における、昭和から令和にわたる薬物使用の歴史を記録しているものである。
それでも、現場のヤバさ、迫力、そしてマトリとして任務に当たる方々の使命感の高さなどがひしひしと伝わってくる。
とともに、
現在、薬物汚染はさらに「闇」に、そして「グローバル」にと刻々と深化しつつあると思われるし、
違法薬物だけではなく、この本の最後に述べられている、医療用の「正規」な薬物(睡眠薬など)の違法な売買も大きな問題だ(睡眠薬に限らず、美容や"やせ"や・・あれこれ)
麻薬や大麻、覚醒剤といった、いわば古典的な薬物と違い、近年蔓延する「合法ハーブ」などの危険ドラッグ。パッケージもショップも気軽な雰囲気で、手を出しやすい、そんなに大したことない、イケてるイメージなのかもしれない。が、いずれにしても、ひとつのクスリに手を出したら、その後は・・・・・
今、皆が「手っ取り早く、良くなりたい」という時代になってしまっているのではないか。
手っ取り早く気持ちよくなりたい。(そのために使うクスリが、その後心身をむしばむかどうかなんて気にしない)
手っ取り早く、ネットで人と会わずになんでも買えればいい。法律とか知らない。どうでもいい。
手っ取り早く、やせたい。そのためには嘘をついても別にいい(自分が糖尿病ということにして薬を出してほしいなど)
そして薬が蔓延し、人体が、こころが、果ては土壌が汚染されていく。
皆が、違法薬物の問題を認識しないといけない。人体に摂取するものが危険なものであってはいけない。そして、その薬物の作用によって、善良な他人に被害が及ぶことも断じてあってはならない。
その悲惨な状況を目の当たりにしているのがマトリの方々なのだ。
皆が安全に、健康に暮らせる毎日のため、マトリや警察の方々は今後も世界を股にかけて走り回るのであろう。敬服するとともに、担当する皆さんも安全であっていただきたいと祈るばかりである。
興味がある方はぜひ一読を。
なお、麻薬取締官は、半数以上が薬剤師だという。薬学生の皆さん、こういう世界での活躍も視野に入れてみるのはいかがでしょうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿