年末に片付けができなかったデスクと本棚。
いろんなモノが(汗)いよいよ崩落しそうになってきたので少し片付けていたところ、
古い記事だが、こんなものが発掘された(ツン読になっている文献が地層をなしている…汗)。
Martin Christian Hirsch et al.
Rare diseases 2030: how augmented AI will support diagnosis and treatment of rare diseases in the future
Ann Rheum Dis. 2020;79(6):740-743. doi: 10.1136/annrheumdis-2020-217125.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32209541/
2030年、AIは、希少難病の診断や治療をサポートするだろうか? という記事。
もちろん2024年現在でも、医療機器やデータ解析など医療のプロセスにAIが活用され始めているが、希少疾患、すなわち患者数が少なく多くは診断が難しい疾患(よかったら本を見て下さい)についてはどうだろうか、という問題提起である。
ちょっと興味深かったので、長くなるけど以下に概略を紹介。ときどきツッコミが入るかもですがご容赦下さい。
この記事の体裁としては、2030年現在の話として、
”18歳で、ヨーロッパのある村に住むOmerという若い男性”
の体験談となっている。未来の話でありもちろん架空。
”幼少時から発熱、倦怠感、腹痛の発作に悩まされ、これまで多数の医師を受診するも診断や治療に至っていないという状況”が設定されている。なるほど(ここまでで専門医であればおおよその見当をつけられるのではあるが汗)
そこでOmerは、まずググった。
しかしうまくヒットしなかったので、次にSNSに投稿。(しかし2030年にSNSってどうなってるのか? 残ってるのかな? ていうか個人情報大丈夫かな)
そうすると、検索歴やそれまでのアプリのダウンロード歴から、とある「症状チェッカー」のアプリの広告が表示される。ターゲット広告だよね。
Omerはそのアプリをインストールし、症状チェック開始。
するとアプリのチャットボットが、住んでいる地域や人種、もともとの体調や最近の症状などを次々と質問していき、Omerには、最近ふくらはぎに痛みのある皮疹があることもわかった。(ていうかそれ最初から言って)
チャットボットのアルゴリズムによって、まず最初の候補となる病名が挙げられる。いくつかの自己免疫疾患や周期性発熱症候群である。しかし、さらに情報が必要と判断されたチャットボットにより、さらに問診が加えられ、疾患の候補がしぼられる。
Omerは、皮膚の写真をアップロードするように求められた。
さらに質問があった上で、いくつかの周期性発熱症候群の可能性が挙げられた。
チャットボットはOmerの過去の疾患や治療歴について質問。その結果、さらに情報が必要と判断されたため、チャットボットはEUの倫理的リコメンデーションのもとに、下記の情報にアクセスしてよいかを尋ねてきた:
・スマホにトラックされたOmerのアクティビティデータ
・Omerの現在と過去の居住地(疾患の地域による頻度を調整するため)
・過去の疾患や治療を確認するため、医療保険の情報
Omerはこれに同意。
さらに、特異的な容貌を示すことが知られているいくつかの遺伝性疾患の可能性について確認するため、チャットボットはOmer に顔の自撮りをスマホで撮って送るように求めた。その結果、そういった遺伝性疾患は否定的となった。
病歴が長いので、遺伝的な要因についてのさらに詳細な判断が必要と考えたチャットボットは、Omerの遺伝情報へのアクセス(遺伝子変異だけでなくSNPも含め)へのアクセスを求めたが、Omerはそれは拒否。
そこでチャットボットはOmerの家族歴を詳細に調べ、叔父にも似たような発熱症状があることを見出した。(叔父の医療情報にもアクセスしたのでしょうか?)
以上の検索から、アプリのチャットボットは
「家族性地中海熱」
の可能性が高いと考えたが、診断には専門家のサポートによるさらなる診察や検査が必要であるため、アプリはここまでの流れや仮説、さらに鑑別が必要な疾患や次の診断ステップなどを列挙したレポートを作り、Omerに、適切な医師に送るよう求めたが、Omernには心当たりがいなかったため、アプリが検索し、最も近くにいる専門家を割り出した。
Omerは、そこで示された、最も近い(90km離れた)(東京から高崎くらいでしょうか汗)エキスパートにコンタクトをとることに了承した。そこでチャットボットは、そのクリニックが、アプリに適合するインターフェースを備えていることを確認した上で、レポートを送った。
レポートを受信した専門家は、家族性地中海熱の可能性が高いことに同意し、Omerと遠隔で面談。(乾燥)血液、尿、遺伝子の検査キットを送り、返送してもらった。
検査の結果、診断は確定。アルゴリズムにより薬物治療が推奨され、医師はOmerと遠隔面談の上、電子処方箋を送信。
Omerは翌日、近所の薬局で薬を受け取ることができ、以後、症状のトラッキング、センサによるデータチェック、自宅でできる検査、定期的なチャットボットによるコンタクトなどによってOmerの症状は軽快し、治療を続けたのであった。
というところでこの症例の経過についての記載は終わっている。
その後のパラグラフのタイトルは
IS SOMETHING LIKE THIS ALREADY POSSIBLE? ALMOST
すでに、症状チェッカーアプリの一部では、希少疾患についての知見も取り入れており、AI アルゴリズムの進化によって特異的な皮膚疾患、遺伝性疾患の特異的容貌などが画像をもとに鑑別可能となってきている。専門家のリポジトリも存在。遠隔診療におけるEUの倫理的リコメンデーションもできている・・・などなど(以下略)
しかしながら
個別に確立されつつある上記のリソースをどのようにして、患者および医療従事者双方が信頼できる、シームレスでかつ使いやすい倫理的プラットフォームに統合するかが、現在の課題であると述べられている。
起こりうる誤診や、治療における合併症などのリスクに対する責任(アカウンタビリティ) を保証するためにも、機構プロセスのトレーサビリティ が必須であると。
"Convenient should not be enough when it comes to personal health."
↑これ、現在においても、例えばオンライン診療などを安易に使おうとしている人々に伝えたい言葉。
ちょっと長くなってしまったが(しかも最後の方ちょっとはしょったが(汗))、この記事の最後に書かれている下記の一文で締めくくりたい。ChatGPTとか言われると「それって剽窃なんじゃないの」と思ってしまう自分ではあるが、今年は個人的にもAIをどう使って行けるのか、学んでいこうと思っている。
Then, machine and human will truly work and think together --- and it will usher in the age of AI.
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