先日、外勤先の看護師Kさんが、
「コロナにかかってから、コレステロール値が高くなった人が多くないですか?」
とおっしゃったので、そういう内容の報告があるかちょっと検索してみた。
そこでピックアップした論文の一つが、これ。
「SARS-CoV-2感染者における長期的な健康への影響の非感染者との比較:住民対象コホート研究CoMoLoフォローアップ研究の結果から」
Heidemann C, et al.
BMC Public Health. 2023 Aug 21;23(1):1587. doi: 10.1186/s12889-023-16524-8.
ドイツからの報告。
今回のパンデミックの初期、2020年に、SARS-CoV2ウイルスの抗体について調査するために、ウイルス感染の有無を問わず住民をエントリーしたコホート研究、CoMoLoからのデータを用いての報告である。
今回の検討には、4,817人の成人が参加(平均年齢49.8歳、女性が約54%、エントリー時にコロナ感染していた人は350人(7.3 %)、
この人々を、約1年間の観察期間で追跡。
1年後に、エントリーした中で、コロナに感染した人・しなかった人それぞれで、どのような症状や訴えがあったかについて調べた。
その結果、
調査開始から1年後の時点で、コロナに感染した人としなかった人とに違いがあった項目、すなわちコロナ感染との関連が認められたのは、
味覚・嗅覚異常(オッズ比(OR):4.11)
息切れ(3.46)
呼吸時の疼痛(2.36)
疲労感(1.76)
下肢脱力(1.93)
筋痛、関節痛(1.53)
咳(1.34)
などで、
コロナ感染者では、非感染者と比べ明らかに健康上の訴え(長引く、または繰り返す症状)が多かった(1.43)。
そして、調査期間中に新たに診断された疾患として、感染者・非感染者のいずれでも心血管疾患・代謝疾患が最も多かったとのことだが、特にコロナウイルス感染と明らかに関連していたのは、
新たに診断された
肝臓・腎臓疾患(3.70)
肺疾患(3.50)
心血管・代謝疾患(1.68)
だったとのこと。
「コロナの症状はひどかったけどおさまったから、もう後はなんともない」
とは言い切れない、長期的な影響がありうることが報告されている。
そして「代謝疾患」には、糖代謝・脂質代謝の異常が含まれていると考えられる(その詳細な比率は今回の報告では明らかではなかったが)。つまり、そういった疾患が、コロナに罹患した人の方で有意に多く、「新たに診断」されていたということなのである。
ここでは主に身体的な疾患への影響が述べられているが、いわゆるブレイン・フォグや精神症状の残存なども考えると、個人だけでなくその人の属する学校や職場、社会全体が、今後数年にわたって今回のコロナ禍の影響を慎重にとらえ、対応を考えていく必要がありそうである。
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