CareNetに興味深いタイトルの論文紹介があったので、ざっくり眺めてみた。
原文はこちら↓
Carter S, et al. Impact of dietary cholesterol from eggs and saturated fat on LDL cholesterol levels: a randomized cross-over study. Am J Clin Nutr. 2025 Jul;122(1):83-91. doi: 10.1016/j.ajcnut.2025.05.001.
よく脂質異常症の患者さんなどから、
「卵は食べていいんでしょうか」
と聞かれるが、まさにその件である。
(ちなみに私は、基本的に”食べて大丈夫ですよ。ただし・・”と説明している。"ただし・・"以下は個別のケースによる)
今回の研究目的は、食事から摂取される
・コレステロール
と
・飽和脂肪
のいずれが血中コレステロール値に対してより影響しているかについて、比較しようとしたもの。
今回、研究に参加したのはは61名の成人(平均年齢 39±12歳、BMI 25.8±5.9 kg/m²、ベースラインのLDL < 3.5 mmol/L(135.35mg/dL)未満)で、研究デザインは、無作為化クロスオーバー試験。
この方々全員が、以下の3種類の食事(カロリー同じ)を、5週間ずつ食べたという。
1)卵は1日2個、高コレステロール(600 mg/日)・低飽和脂肪(エネルギー比率6%)の食事=「EGG」
2)卵なし、低コレステロール(300 mg/日)・高飽和脂肪(12%)の食事=「EGG-FREE」
3)卵は週1個、高コレステロール600 mg/日・高飽和脂肪(12%)の食事=「CON」
つまり、
5週間、1)から3)のうちのどれかを食べ、次の5週間は別のを食べ・・(順序はランダム)とやってもらったということである。
なお、食事の総エネルギー量は個々の推定必要量に合わせ調整され、他の栄養素(タンパク質、炭水化物、食物繊維など)はほぼ一定に保たれていたということである。(栄養士の皆様お疲れ様でした)
ということで、各食事期間の終了時に採血し、各評価を実施。
一次評価項目はLDLコレステロール濃度。その他の脂質検査項目についても検討された。
その結果、
卵を1日2個(EGG)と卵を週1個(CON)を比べてみると、
血中LDLコレステロール値は、卵を毎日食べていた EGGの方が、卵週一個群(CON)より低かった(EGG:103.6 ± 3.1 µg/dL、CON:109.3 ± 3.1 µg/dL、p = 0.02)。一方、卵なし(EGG-FREE)では有意な差がみられなかった(107.7 ± 3.1 µg/dL、p = 0.52)。
そして、すべての食事において、飽和脂肪の摂取とLDLコレステロール値は、正の相関(β = 0.35、p = 0.002)を示した。これに対して、食事性コレステロールとLDLコレステロール値との相関は見られなかった(β = -0.006、p = 0.42)という。
このことから、
"LDLコレステロールを上昇させるのは、食事性コレステロールではなく飽和脂肪である"
と結論づけられている。
よし! 卵食べてもいいんじゃん!!!
と早速思うところであるが、
ちょっと待ってほしい。
この研究では、数値だけではなくLDL粒子サイズの変化についても解析されており、
それによれば、EGGでは大きめのLDL粒子が減少して、いわゆる"小さい"LDL粒子が増加していたという。
いや"小さいLDL粒子"は悪玉よ??
(参考)
ということで論文概要のConclusionの部分をそのまま引用すると:
”Saturated fat, not dietary cholesterol, elevates LDL cholesterol. Compared with consuming a high-saturated fat diet with only 1 egg/wk, consuming 2 eggs daily as part of a low-saturated fat diet lowers LDL concentrations, which may reduce CVD risk. However, this effect on CVD risk may be mitigated, at least in part, by a reduction in less-atherogenic large LDL particles and an increase in more atherogenic small LDL particles.”
これを訳してみると(仮訳ですが)
食事性コレステロールではなく飽和脂肪酸が、LDLコレステロールを上昇させる。
飽和脂肪酸を多く含む食事を摂って週に1個のみ卵を摂取する場合と比較して、飽和脂肪酸の少ない食事を摂りつつ毎日2個の卵を摂取する方が、LDLコレステロール値を低下させ、これによって心血管疾患(CVD)のリスクを低減しうるかもしれない。
ただし、「毎日卵を2個」の食事によるCVDリスクへの効果の少なくとも一部は、動脈硬化を起こす可能性がより低い大粒子のLDLを減少させ、逆に動脈硬化を起こすリスクが高い小粒子のLDLを増加させることによって、相殺される可能性がある。
やはりさらなる調査(と長期的な観測)が必要かも。
まとめとして、CareNetの記事の以下の部分を引用しておくので参考にしつつ、みんなしっかり朝食を摂りましょうね!
"Buckley氏は、「われわれは、固ゆで卵のような厳格なエビデンスをもって、謙虚な卵の名誉を守ったと言えるだろう。朝食の中で心臓の健康に悪影響を与える可能性が高いのは、卵ではなくベーコンやソーセージなのだ」と話している。"(CareNetより引用)
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