2024年7月4日木曜日

粉塵と認知症の関連

こんなニュースがあった。

[日経メディカル] 海外論文ピックアップ JAMA誌より「65歳未満の認知症リスク、粉塵曝露レベルに応じて増加」

アメリカからの奉告。

2001年9月11日の、いわゆる911テロ。

ニューヨークでのあの悲惨な映像は、20年以上たっても、テレビで見ていただけの私たちの目にもまざまざと映るような、歴史を変えてしまった事件。


あの事件では、テロの直接の被害者のみならず、救助活動や、ビル解体に当たった方々も多数おられるわけで、

この論文では、そんな


"2001年9月11日にニューヨーク市で起こったテロ攻撃によるビル崩壊後の救助活動に当たった人を対象にしたコホート研究を行い、粉塵やがれきの曝露状況や個人防護具(PPE)の使用と、認知機能の関連を調べ"

という。(紫文字部分は引用.。太字は筆者による)


PM2.5などの大気汚染物質は、これまでにも認知症との関連が示唆されてきているが、

[公益財団法人 大阪難病研究財団] 環境中の大気汚染物質濃度と臨床診断認知症との関連評価の研究-システマティックレビューとメタアナリシス-

[Nature Aging] 健康:高齢男性が大気汚染に短期間さらされることと認知機能障害との関連性 Nature Aging 2021年5月4日


今回、911によって生じた粉塵への曝露と、その後の認知機能との関連について、2014年から2023年まで追跡評価したという。


今回の研究組み入れ対象は、救助活動に勤務またはボランティアで参加した、当時認知症ではなかった(そしてテロによる頭部外傷や、その他の脳神経疾患もない)60歳以下の人。追跡は、18ヶ月ごとに行われたとのこと。なお91%が男性であった。


"粉塵曝露の程度は、詳細な質問票を用いて評価し、曝露関連の作業として、微粒子曝露、神経毒性を有する可能性のある粉塵への曝露、作業時間、PPE着用などに関する情報も得た。曝露レベルは、最低から重度までの5段階に分類した。最低レベルには、曝露がなかった人とPPEを着用していた人を含めた。"

"主要評価項目は、65歳未満でのあらゆる認知症の発症に設定した。なお、米国の一般集団では、65歳未満での認知症発症率は1000人・年当たり1.19と報告されている。"


その結果、


1000人・年当たりの発症率は、

曝露レベルが

最低(342人) 2.95(1.07-11.18)  これを基準とすると

軽度(2805人)12.16(10.09-14.79)ハザード比 4.61(1.63-13.07)

中等度(1450人)16.53(13.30-20.81)ハザード比 5.15(1.78-14.9)

高度(324人)30.09(21.35-43.79)ハザード比 8.45(2.80-25.48)

重度(89人)42.37(24.86-78.24)ハザード比 9.47(2.70-33.14)←高い!!


ということから、

粉塵への曝露レベルは認知症発症リスクと関係しており、"粉塵への曝露状況が深刻だった人は65歳未満での認知症発症リスクが高かった"と報告されている。なおPPEの有効性も示されているので、災害ボランティアなどに行かれる方はマスク着用しての作業をお勧めしたい。

原文:

Clouston SAP, Mann FD, Meliker J, et al. Incidence of Dementia Before Age 65 Years Among World Trade Center Attack Responders. JAMA Netw Open. 2024;7(6):e2416504. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.16504


この結果は、大気汚染と認知症との関連についての新たな一つのエビデンスとなるかもしれない。


さて、これに関連して、

先日このブログに書いたシーシャに関しても、シーシャ自体およびシーシャバー店内にはPM2.5が多く存在しているわけなので

(それを示す報告はいくつもあって、上記ブログ記事内の三好らの論文とか、例えば

Gurung G, et al: Effects of shisha smoking on carbon monoxide and PM2.5 concentrations in the indoor and outdoor microenvironment of shisha premises. Sci Total Environ. 2016 ;548-549:340-346.)

[なかなかインパクトのある論文タイトル→] Zhang B, et al. 'Enter at your own risk': a multimethod study of air quality and biological measures in Canadian waterpipe cafes. Tob Control. 2015;24(2):175-81.

とか)


ということは、


シーシャバーにひんぱんに、かつ長時間滞在してシーシャを喫煙している若年者は、将来認知症リスクが高くなる可能性がある(仮説)


ということになるのだろうか?





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