SARS-CoV2による感染症COVID-19が、さまざまな神経症状、さらには「ブレイン・フォグ」と言われるような認知機能の障害を起こすことは、今では広く知られている。
そんな中、今日、ネットでどなたかが紹介していた総説があったのでざっと一読。
infectious hypothesis、つまり
「認知症は、何らかの病原体の感染が、その根本要因となっている」
という仮説である。
もちろん、これまでのところ、その仮説を証明できるエビデンスはまだ確立していないと思われるが、この総説によれば、1900年代の初め頃から提唱されてきている、由緒ある(?)仮説であり、やはりそれなりに説得力を持っていると思われる。
なんらかの特定の病原体(ウイルスなど)による感染が直接認知症を起こすというより、感染を繰り返すことによる炎症が、認知症につながるのではないかとも報告されているようだ。このようなメカニズムに関連しそうな病原体として、ここでは単純ヘルペスや、歯周病菌などの例が挙げられている。
これらの病原体への感染と、アルツハイマー病の病因として重要とされるアミロイド蛋白の蓄積や、感染による各種炎症性サイトカイン産生との関連などが議論されてきているのである。
そして今回のSARS-CoV2。
コロナ感染後に神経症状(味覚や嗅覚の障害から脳炎までを含む)を示した患者の中枢神経で、アルツハイマー病に関連する蛋白や神経組織の変性がみられたとの報告のほか、
神経症状はみられなかったケースでも、重症コロナ患者では大脳皮質や脳血流の変化が検出されたとか、コロナ陽性者では認知機能障害の発症率が高かった、などの報告の例がまとめられている。
もちろん、ほとんどの方は新型コロナウイルスに感染しても(少なくとも現時点では)認知機能に問題なく回復されているので、心配しすぎることはないと思う。
ではあるが、これまでの多くの歴史的経緯(麻疹などの例)からも、「病原体が中枢神経系に影響を及ぼす可能性がある」ということは頭の片隅に覚えておいて、
やはり、なるべく感染しないですむように感染予防策を、個人個人のレベルで続けていくのが良さそうだ。
COVID-19は、感染症としての法律的な扱いが5類になり、感染者数の把握どころか検査や受診も行われなくなり、
「もうコロナは終わった、単なる風邪だ、マスクをどんどん外していきましょう」という方々も多くおられる。
しかし、小児で脳症が多く報告されている(参考記事:新型コロナ感染の子ども 31人「急性脳症」日本小児神経学会(NHK岡山))こともあり、
未知の病原体による新興感染症が、感染者にもたらしたであろう生体内の変化を、まだ今後少なくとも数年間ほどは、注意深く観察していく必要がありそうである。
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