名匠トム・ストッパードによる戯曲である。
以前に新国立劇場で日本初演され(演出は小川絵梨子さん)行きたかったがかなわず、今回、NTLiveがあると知って楽しみにしていた。
しかし、上映スケジュールを見てみると1日1上映しかなく、しかも平日は夜の1回のみ。平日に夜遅くなるのはちょっとなぁ…ということで、祝日の今日行く!と決意したのである。
そこでチケット予約を試みたところ、みんな同じ事情なのか、かなり座席が埋まってしまっており、残っていた最前方のサイド席で観ることに。とは言え、ちょっとだけ見上げる程度で、そんなに見辛くなかったので問題なしであった(TOHOシネマズ日本橋スクリーン6)。
これは、あるユダヤ人一族の、50年に渡る歴史の物語。
何か華々しいスターがいる家庭とか、とてつもないことが起こるとか、そういう「特別な」家族の話ではない。
ただ、第一次大戦から、ナチスによるユダヤ人迫害、そして第二次大戦の戦後に至るまでの時間軸の中で、
「普通の」ユダヤ人一家の日常の営みがどのように巡り、ある時は笑い合い、ある時は蹂躙され、
そして大家族がどのようにしてわずかに生き残ったのか、
そのささやかで、かつ壮大な流れを描く群像劇である。
人が歴史を作るが、人は歴史に翻弄される。
その中で人は家族とそして他者とつながり、命を、そして/あるいは記憶を、残していくのである。
悲惨な記憶のうちにも温かい芽生えはきっとあるが、それに気づくためには自らのうちにある傷のありかを見つけなければならない。
家族、民族、宗教、そしてそのボーダーがどこにあるのか、現代に生きる我々にも深く考えされる作品であるように思う。
冒頭から登場人物が多く、やや混乱するかも(すみません混乱しました)。なので、鑑賞後に復習しようと思ったのだが、パンフレットを買いに行ったら売り場の方に”ここではそういうのは売ってない”と言われた……のですが、単に売り切れなのではないかと…(疑問)
とは言え、多少登場人物の関係がわからなくても(汗)そんなことは気にならない圧倒的な見応え。上映時間は長いが(休憩なし)、あっという間に感じた。
シンプルな舞台装置ではあるが、背景、照明、小道具、衣装が「その時代」の空気を再現し、長大なセリフと繊細なやり取りや仕草が登場人物の感情を豊かに表している。シアター・ライブなので、キャストの表情が大写しでわかるほか、現地劇場の様子も映し出され、時々観客の反応も聞こえるのが観劇の楽しみを増す(現地で観たいけどやっぱり考え抜かれた字幕があったほうがいいなぁとも思ったり(英語力・・))。
今回は多分限定上映なのだろうけれども、内容と人物を咀嚼した上で、機会があればもう一度観に行きたいと思った。
写真は、映画が終わってコレド日本橋2を出たところの日本橋風景。
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