先日、医師会から精神疾患の診療に関わる本をいただき、大変勉強になっている。
その中で発達障害について、一般の方・患者さん向けにわかりやすく書かれた本として紹介されていた新書、「ぼくらの中の発達障害」を読んでみた。
「ちくまプリマー新書」という、初学者・若い人向けのコレクションの一冊。発達障害を持つ、あるいは持っているかもしれない人と、そのまわりにいる方々に向けて、内容は専門的ながら、わかりやすい文体で書かれた本である。
厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス」によれば、発達障害とは「生まれつきの特性です」とあり、「行動面や情緒面に特徴がある」ため、「生きづらさを感じたりすることも」ある、と記載されている。
発達障害は、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。そのため、養育者が育児の悩みを抱えたり、子どもが生きづらさを感じたりすることもあります。
発達障害があっても、本人や家族・周囲の人が特性に応じた日常生活や学校・職場での過ごし方を工夫することで、持っている力を活かしやすくなったり、日常生活の困難を軽減させたりすることができます。(以上引用)
ではあるが、
この本の著者である精神科医 青木先生は、いわゆる「正常」対「発達障害」というのではなく、定型発達と発達障害とは連続的(しかし異質)なものである、というふうに説明されている。
そして「僕や君の中には『弱めの症状』が、患者さんと呼ばれる人の中には『強めの症状』がある、と考えたらいいよ」と話すようにしている。(本文より引用)
一方で、発達障害というものは「異質」なものであり、違うものの見方をする、すなわち「違う文化」を持つ人だ、ととらえることも大切であると述べている。
そのようなとらえ方をベースに、この本では発達障害を持つ方々の例を紹介し、自閉症の方がどのように成長してきたかや、広汎性発達障害の方がどういうふうにして学校に行けるようになったか、など、一人一人の患者さんと真摯に向き合ってきた精神科医の診療とその成果の一部(むろん、ここには記載されない難しいケースも多くあったはずである)が書かれていて、患者さんから、そして著者から、多くのことを学ぶことができると思う。
第六章は、「発達障害を持つ人たちへのアドバイス」というタイトルだ。
この章では、少しびっくりしたことに、「発達障害を持つ人が読みやすいように」と、フォントはゴシック体、主語述語が明確、また漢字とひらがなが適度に混じるように・・など、文章や内容だけではなく、体裁も工夫されている。なるほどなあと思った。ただ、文章はやや難しいかなと感じるところもあった。わかるところだけ、まずは読んでみたらよいのではないかと思う。
いわゆる発達障害的なコミュニケーションの困難さ、こだわりなどは、我々皆の中に本来的に内在するものであり、
またこれまでもそれを多く持っている人がいて、それでも社会の中でそれぞれ居場所を見つけて暮らしてきたものが、
時代と社会が変わったことで、発達障害という「病気」としてラベルされ、浮き上がってきたのではないか・・という著者の指摘には、同意できると思う。
我々はみな違う文化を持って暮らしているのだ。それをまずは認識し、その中で生きづらさや苦しさで心が固まりかけているような人には、ともに考えともに歩む姿勢を持って、ゆっくりとお話をしていくことができれば、と思う。
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