今年の大河ドラマ「鎌倉殿の十三人」。
鎌倉時代のことをよく知らなかったので、北条氏や承久の乱について何冊か本を読んでいるうちに、わりとはまってしまっている。
たまに鎌倉に行くことがあるが、これまでは鶴岡八幡宮を歩いているとき、
「ここで実朝が公卿に殺された」
ということを、"歴史の授業で習う事実"として知ってはいても「ふーん」と思う程度であったが、
あれこれ本を読んでからは、実朝暗殺がまさに、日本の歴史の方向を変えた転換点であったのだな、鎌倉は”修羅の国”であったのだな・・とわかってきたところ。
今回、葉室 麟「実朝の首」角川文庫 を読了。
大河ドラマでは、おそらく秋に描かれるであろう実朝暗殺。
甥の公暁に、親の仇と叫ばれながら、栄華の絶頂で頸を切られ殺害された実朝、
しかしその首は暗殺後にどこかに持ち去られ・・・
という場面から始まる歴史小説である。
謎の多い実朝暗殺の黒幕は誰なのか、
そして「首」はどうなってしまうのか、
というスリリングな展開が、次々と登場する三浦・和田・北条などの武士、北条政子やその他の女たち、あるいは後鳥羽上皇側の、それぞれに思惑を持つ登場人物によって万華鏡のように繰り広げられる。
登場人物が多いので、何か一覧とか相関図のようなものがあるとわかりやすいかという気もしたが、退屈することなく一気に読んでしまった。
もちろん小説であるので、史実と、それを埋める物語とで構成され、全体として一つのストーリー(仮説)となっている。鎌倉は修羅の国、しかしその中で当時の人々はまさに命懸けのやりとりをし、男も女もそれぞれの戦いに挑み、濃密な人生を短く生き切ったのだと思える物語である。
そして実は実朝は・・(以下はネタバレになるので書けないが)という、ある意味、死んでいる実朝が最初から最後まで主役。殺人から始まる物語であるが読後感は暗くならない。
なかなかのおすすめ。
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