たまたま書店で見つけた本「災厄の絵画史」を読んだ。面白かった。
人類ははるか昔から、あらゆる災厄に翻弄されてきた。
天変地異、戦争、疾病(パンデミック)、陰謀や殺人など。
人間はしばしば残虐であったし、治療法のない疾病の前には無力であったし、そしてまた、ジェンナーの時代から「反ワクチン」な人々もいた。
そんな、災厄を巡る人間や自然の姿を、時代時代の芸術家は描き、表現してきた。そのような作品を、いつもの中野さんの筆致で解説しつつ紹介する一冊である。コロナ禍の今、タイムリーであるし、引き込まれて読んだ。
どの章もマニアックで(?)面白い。有名な絵画も、あまり見たことのない図版もある。題材となった疾病だけでも、ペスト、梅毒、結核など多彩だ。
どの絵も怖いし痛そうだし苦しそう・・・と思いながら読んでいって救い(?)になるのは、「免疫学の父」ジェンナーが、予防接種を発明した時の最初の接種の絵だ(アーネスト・ボード画『少年に予防接種をするジェンナー』、1910年)。
mRNAワクチンが実用化された今、改めてジェンナーという人と、最初の接種を受けた少年とその母親の勇気、そして偉大さに感嘆するばかりである。
人間は災厄の中で生きてきたのだなと思うし、それを見つめ、描き、作品として伝えてきた画家が、我々を災厄の中で生き延びさせてきたのだろうと思う。
おすすめの本なのでぜひお読みいただければと思うが、
ひとつ残念なのが、見開きの絵の中心部が、本の製本の都合上、見えなくなってしまっていることである。
とくに、まさにその「絵の中心部」に絵の肝心な部分が描かれているものが多いので、大変に残念である(他でその絵を知っていれば良いが(いや良くないが)、知らない場合には、説明文に描かれている絵の内容がわからないと思う)。
もう少し大きなサイズの製本にして絵の中心をずらすか、あるいは電子本等にすればよいのか、何かこう、もうちょっと何とかなればなあ・・と。
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