英国史には詳しくないが、メアリ・スチュアートに少し興味を持っている。
エリザベス1世との争いに敗れて幽閉され、結局斬首された「女王」。
先日、そのメアリが獄中で書いた書簡の暗号が解読されたらしい、という記事を読んだ。
解読に成功!メアリー・スチュアート女王が斬首刑前に暗号で書いた57通の手紙の中身とは?[TABI LABO]]
なるほど。
この記事に出てくるのは「ホモフォニック暗号」。
ホモフォニック暗号とは、"1つのアルファベットに複数の暗号を充てられる"(上記記事より引用)のこと。
暗号表を見ると、「フランス国王」とか「スペイン国王」とか、あるいは特定の名名詞や"ance”とか"ent”などの語尾にも、それぞれ決まった記号が割り当てられているのがわかる。
これだけでも成果だが、まだ他にも書簡がある可能性が高いとかで、
今後、メアリの幽閉されていた長い期間(19年間も牢獄にいたのだから)、イングランド、そして周辺国でどのような動きがあったのかについての新たな情報が期待されるだろう。
それにしても、
暗号。
暗号は、解読も大変だが、作る方ももちろん大変な作業だ。そして、それをどう伝えるのかも。
ということで、
暗号史について改めてふりかえっておきたいと思い、
「暗号解読」を読んだ。
サイモン・シンによる「暗号解読」。
いや面白かった。
冒頭の第1章に、まさしく「スコットランド女王メアリーの暗号」が登場する。反逆の罪により、エリザベス女王によって告発されるメアリーの姿である。
メアリーを処刑する根拠を得るため、エリザベスはメアリーの暗号を何としても解読しなければならなかった。
手紙の内容がわからなければ、それをもって有罪の証拠とすることはできまい、とメアリーは考えた。だが、そんなメアリーの思惑はすべて、暗号が解読されないという仮定の上に立っていたのだ。(『暗号解読(上)』本文より抜粋)
暗号を解読されてしまったスコットランド女王メアリーは、結局、無残にも処刑されることになる。(改めて、こんなに数奇な運命をたどった"高貴な生まれ"の女性もそうあるまいと感じる)
本書ではその後、人類がたどってきた長い「暗号の歴史」が語られていく。
古代ローマやギリシャ、イスラムのアッバース朝、聖書、ルネサンス・・。
人間の駆け引きがある限り、特に戦争がある限り、人間はあらゆる暗号を開発し、使っていくのである。
以降、世界大戦での暗号機の開発、下巻では古代文字の解読から、現在使われている暗号化システムまで、暗号の作成と解読、そしてそれに関わってきた多くの才能ある人々の人物像も含め、多彩でスリリング、そしてエキサイティングな内容が綴られる。
最初は人文科学かなと思って読んでいると、途中からは数学、物理学、量子力学の話になってきて非常に奥深く、人類(の中の才能ある人々)の英知に感嘆するばかりだ。
今は、自分ではせいぜいネットショッピングのセキュリティに注意していればよいような生活でも、暗号はつねに世界に駆け巡っている。
凡人としては、暗号技術が、犯罪やテロではなく、それを抑制し皆が安全に過ごせるように活用され、その方向で進化することを願うばかりである。
0 件のコメント:
コメントを投稿