2022年10月2日日曜日

オペラ "THE MAKROPULOS CASE"

 先日、チャペックの「マクロプロスの処方箋」の戯曲を読み(→こちらの記事)

それをヤナーチェクがオペラ化したというのを知ってから、そのオペラが観たくなり、

ちょっと古い公演のリマスター版があったので、入手して早速観てみた。

今回観たのはこれ。


1995年、グラインドボーン音楽祭での公演のリマスター版で、演奏はアンドリュー・デイビス指揮、ロンドンフィルハーモニック交響楽団。

主役のエミリア・マルティを演じるのはAnja Silja(アニャ・シリヤ)。ドイツのソプラノ歌手で、1940年生まれらしいから、演じたときには50代だったということか。

このオペラ、上記の戯曲を読んで、どのようにオペラ化するのか・・・と思っていたのであるが、

確かに書いてあった通り、戯曲の最後の部分はアレンジされているものの、それ以外はほぼその通りであった(当たり前だ)。

何せ第一幕が弁護士事務所から始まったりする物語なので、まあ何というか、宮殿とか女王様とか、明るい若者たちとかが出てくるといった"華のある舞台"ではないし、

話がセリフで進んでいくので、正直、主役以外の登場人物の動きは少ないし、

聞きほれるようなアリアもないので、ぶっちゃけ、原作を読んでいなければ「なんやねんこの話??」となってしまう・・かもしれない。


原作のチャペックの戯曲では、最終章の模擬裁判で、"ヒトが不老不死を手に入れることについて”の議論があり、そこに深い面白みがあるのだが、オペラではその部分はなく、主人公のオペラ歌手の立ち位置や結論がちょっと異なっている。

ただし、オペラ終盤に向けての主人公の独白や場面の盛り上がりはやはり引き付けられるものであり、

"死があるからこそひとの人生には価値がある"(だいたいこんな感じを意味する歌詞:すみません英語字幕で観てたので汗)などといったセリフから、長い生命を得てしまった主人公の底知れぬ孤独と、短い人生ながら懸命に今を生きる人間への賛歌が感じられる気がした。

できれば、ドイツ語やスペイン語などのセリフをもう少しそれらしく膨らませて聞きたかった気がするが(それが主人公のこれまでの暮らしに関わっているため)。
本作は全体で約1時間半の短い作品なので、また別のプロダクションでも観てみようか。と言ってもあまり他にないかもしれないが・・・。

リマスター版であるが、普通に観る分には、画質や音質に大きな違和感は感じなかった。
アニャ・シリヤさん、ブラボーです。


人は有限の生を生きるからこそ輝いて見える。それは真実であるのかもしれない。
そして同時代を、同じ体験を共有しながら一緒に生きる人がいてくれることは尊いことである。
ということで、これを読んで下さっている方、ありがとうございます。

そして、どこでも皆が平穏に生きられるよう、平和を願っています。

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