人間ドックや健診の業務を行っていると、たまに、思わぬがんが見つかる受診者の方がいらっしゃる。
健診で見つかるくらいだからご本人には自覚症状はないことが多い。その段階で見つかって、すぐに対応していただれば、多くは適切な治療につながり、良い方向に行くと考えられる。
問題は、健診で何かを指摘されても、「症状はないし忙しいから」と、そのままになってしまい、二次検診を受けていただけない場合である。
(さらに問題だと思うのは、そもそも長年健診を受けていない方ではないかと思うのだけれども、それは以前にも書いたので今回は置いておくとして)
という状況の中、医師会雑誌をぱらぱら見てみると、
例えば、大腸がん検診についての記事があった。
大腸がんはかなり多いがんで、国立がん研究センターの「がん情報サービス」を見てみると、「部位別がん死亡数」で男性では肺がん・胃がんに次いで3位、女性ではなんと1位である。
大腸がんの多くは、大腸ポリープ(腺腫)の一部から生じると考えられており、そのために、大腸ポリープを早く見つけて切除することが重要とされる。
しかし大腸ポリープ、もしくは早期の大腸がんでは自覚症状はないため、
ポリープや早期がんからのわずかな出血をとらえよう、というのが現在広く行われている、スクリーニングとしての大腸がん検診、すなわち便潜血検査である。
便を取って提出するだけであるから、検診を受けること自体は簡単だ。
ただし大事なのは、便潜血が「陽性」と判定されたら、次の検査として
大腸内視鏡検査を受けることなのである。
しかしながら現状、
便潜血検査
↓ ----------------------ここに高いハードル
大腸内視鏡検査
という感じであろうと思われる。
わりとありがちなのが、
「その日は便秘だったのでたまたま切れちゃったんです」
とか
「そういえば痔があるのでそのせいだと思います」
とか
ではないだろうか。
医師会雑誌によれば、2018年度、全国の大腸がん検診(便潜血検査)を受けた約844万人の中で、要精密検査となった(便潜血陽性だった)のは7.2%だったが、精密検査を受診したのはそのうち69.3%だったそうだ(未受診、または便潜血の再検査のみ13.6%、未把握(精密検査を受けたか確認できず)17.1%)
つまり10人に3人くらいは、便潜血陽性でも、もう一度便潜血検査をやって陰性なので良かった、としてしまったか、「まあいいか」とそのまま何もせず・・という状況のようである。
この記事の中では、"精密検査を受けるつもりがないのであれば便潜血検査を受ける意味がないのではないか"というようなことも議論されている。
確かに、それは健診全般に言えることであるけれども、何か指摘されても何もするつもりがないのであれば(わりといらっしゃいます・・・)、むしろ健診を受けるデメリットやリスクだけが残ってしまうので問題であるようにも思う。
また改めて記事内でも強調されているように、便潜血検査が陽性であったら、ただちに大腸内視鏡を受けるべきなのであって、「もう一度便検査をやったら今度は陰性だったので安心だ、良かった」としてはいけないのである。
それは、大腸がん(またはポリープ)からの出血は常にだらだらと出ているわけではなく、ほんの一時、便潜血という形で、いわば"がんがちょっと顔を出してくれた"かもしれないその機会を「見なかったこと」にしているに過ぎないからである。
内視鏡の専門医の先生に伺うと、便潜血陽性だったのに放置していて、次に気づいたら進行がんが見つかった患者さんを診た・・というような経験をされている。
ただし、大腸がんに関しては、高齢者については慎重な対応が必要である。それは大腸内視鏡検査やポリープ切除はリスクを伴う検査や処置であるからである。よく相談の上、検査をするとなったら検査入院など万全の体制で行うべきであろう。
・・などといろいろ考えさせられたのであるが、
実は不肖私も、便潜血検査で異常が出たことはこれまでないけれども、
男もすなる大腸内視鏡といふものを、女もしてみむとて
いや違う、
なんだかんだあれこれ健診を受けてきたけれど、大腸だけまだちゃんと検査したことがないからやはりやっておかねば・・
と思っていたところ消化器内科の先生に、そうですよ一度やっておいた方がいいですよ~😄と(どーんと)背中を押され、観念して(?)
少し前だけど、人生初の大腸内視鏡検査を受けてきたのであった。
いやぁ・・
・・・
・・
まずね、あれね、検査食。
まあいいんですが、がんばっていただいてはいるんですが、あの、もう少し・・おいしくしていただければ(できれば)。あと、目立たなくしていただければ(できれば)。仕事の時間帯でも不自然でなく飲み食いできるおしゃれなパッケージにしていただければ(できれば)。
あと下剤関係。
もう少し、もう少しでいいので少なくしておいしくしてほしい(できれば)。
あと、ちょびちょび飲みながら心をやすらかにするために「明日大腸内視鏡を受けるあなたのために」とかのイメージビデオがあっても(いやいらない)。
いやしかし、
検査自体は短時間ですし特に苦痛もなく、終了後は「これでこの先数年間、私は大腸がんの心配から解放された!」とほっとしたのでありますよ。苦行の後の安らぎの境地。いや違うか。
ともあれ、
便潜血検査でひっかかった方、便秘とかおなかの症状がちょっと心配な方、家族に大腸がんになった方がいらっしゃる方などは、
消化器内科で一度、がんなどの検査や今後のおなかの健康について、ご相談いただくと良いかと思います。
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