千駄木の、森鴎外記念館に行ってきた。
今年は、森鴎外没後100年(生誕160年)。また、この記念館も開館10周年だそうだ。
以前にも来たことがあるのだが、今ちょうど特別展をやっているとのことで、仕事が終わってから団子坂を歩いて再訪。
特別展の入り口で、等身大の鴎外が出迎えてくれた。
鴎外は島根県の津和野町で生まれ、10歳で上京して東京大学で医学を学び、軍医となってドイツ留学。帰国後から多くの文学作品や評論を発表し、また軍医としても昇進。
戦時であって政治的にも激動の時代にあって、さぞかし多忙だっただろうと思う一方、当時の「大学」では思う存分学究活動に専念できた人がいるのだなあと思い、今、「文豪」と呼ばれるような人間が育まれうる教育的環境はあるのだろうかとふと問いたくなる。
まあしかし医師としては、森鴎外が「脚気」に関して間違った判断をしたことで大勢の命が犠牲になったことも忘れないが(脚気は栄養(ビタミン)の欠乏によるという説を認めず、栄養補給をさせなかった)。
特別展では、現在に生きる文学者・研究者が、鴎外をどう読んだか、また世界で鴎外がどう読まれてきたかをそれぞれの言葉で紡ぎ、作品・書籍などとともにその言葉が展示されていた。
読んでいくと、鴎外の作品は古びておらず、今まさに感染症や戦争を目の当たりにしている我々が、さらに読み解くことができるであろう視点が示されているように思えた。
記念館に来る前は忙しくて「山椒大夫」だけしか読み返せなかったけれど、もう少しまた何か読んでみようかな、という気持ちになった。
特別展は7月31日まで。
森鴎外記念館のすぐ先には、フリュウ・ギャラリーという小さなギャラリー。
入り口には、ほとんど見ることのなくなったピンク電話があり、どこかレトロで懐かしい雰囲気。
今は、ギャラリーがピックアップした、これから期待される若手アーティストが、同じ大きさのスクエアな小品2作ずつを展示する、
「スクエア ザ・ダブル Vol.15」
を開催中(7月27日まで;内部は撮影禁止)。
日本画と油絵、同じ大きさ、違うテクスチャ、さまざまに放射する世界観。
それぞれ個性がゆったり重なり合い、小さい作品ながらのびやかで心地よい展示だった。
常設(?)らしい販売コーナーには、かわいらしく、でもどこか非日常な雑貨が。
何かミルクティーでも飲みながら作品を眺めていたいようなギャラリーだった。
少し歩いて、千駄木、不忍通りの街灯に鴎外の横顔。
谷根千散歩、いつも新しい発見があって、やはり楽しい。
今は森鴎外作「鴈」を、少しずつ、スマホの電子ブックアプリで読み始めている。
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