2022年7月12日火曜日

柑橘類と薬

愛媛の同僚から河内晩柑をいただいた記事の続きです。

(あらすじ)産地直送の河内晩柑、早速「ムッキーちゃん」(前回の記事参照)で皮をむき(おお!きれいにむける!!!と感動)、おいしくいただいた私であったが、「和製グレープフルーツ」と呼ばれているというこの河内晩柑、ほんとの(?)グレープフルーツ同様にある種の薬との相互作用があるのだろうか・・・と思ったのであった(つづく)。

ということで、

少しだけですが調べてみました、柑橘類(というか河内晩柑)と薬の相互作用。

まず、良く知られていることとして、食べ物と薬には、ときに「食べ合わせ」、もしくは相互作用がありますね。

その最も有名な(と思われる)例として、「血圧の薬を飲んでいる人は、グレープフルーツジュースは飲んじゃだめ」

と言うのがあるかと思います。

これは、グレープフルーツなど一部の柑橘類(など)に、

「フラノクマリン類」(何種類かあります)

という物質が含まれているため、


フラノクマリンを含むものを食べる・飲む

腸内で、薬物分解酵素「CYP3A4」の働きが阻害される(=薬物を分解する作用が弱くなってしまう)

体内に入った薬が代謝されづらくなり、体の中の薬物の濃度が上がってしまう

効果や副作用が強く出てしまう

ということによるのです。(他のメカニズムによる相互作用もあるのですが、今回は省略)


なので、

CY33A4阻害作用を有するフラノクマリンを含む食物や加工品

CYP3A4という酵素で分解される薬

の食べ(飲み)合わせには要注意、ということになるのですね。

※めっちゃたくさんあります。特に飲んでいる人が多いと思われるのが降圧薬(カルシウム拮抗薬:アムロジピンやニフェジピンなど)、不整脈の薬(アミオダロンなど)、高コレステロール薬(アトルバスタチンなど)、睡眠導入剤(トリアゾラムなど)、免疫抑制薬(シクロスポリン、ネオーラルなど、アトピーの患者さんでも飲んでることがあるかも)、抗てんかん薬のカルバマゼピン、などなど・・・・・ご自分の飲んでいる薬はどうなのかわからない場合には、おかかりの薬剤師さんに聞いてみて下さいね。

実はこの、フラノクマリンが薬の代謝を邪魔する作用は、それを含むグレープフルーツなどを飲み食いした後すぐ消えるのでななく、しばらく(数日程度は)残るとされています。なので、

「朝にグレープフルーツを食べても、その時一緒に血圧の薬を飲まないようにすれば大丈夫ですよね?」

・・というわけにはいかず、基本的には「薬を飲んでいる期間中は、同時に食べるのではなくても、グレープフルーツ(ジュースも)はやめておきましょう」ということになるのです。悲しい。

もちろん、果物に含まれるフラノクマリンの量や種類には季節や個体によって差がありますし、「薬と同時に飲み食いしてもこれまでは何もなかった」という人もいるかと思います。が、同時に飲み食いしてひどいことになった例もありますので(例:Lancet:論文になってなくても血圧が下がりすぎたりとかいろいろあるかと)、なるべく摂取を控え、どうしても食べたい方は主治医に「グレープフルーツを食べても良い薬に変更できないか」と相談してみるのが良いかと思われます。


さて、前置きが長くなりましたが(前置きだったんかい!!)、

グレープフルーツ以外に、どんな柑橘類がフラノクマリンを多く含んでいるのか。

ここでは、日本人による日本人のための(ほんとか)、柑橘類に含まれるフラノクマリンを測定した論文のデータをご紹介してみます。いずれもすでに公開されているものですので、詳細は原本を当たって下さいね。

なお、測定対象の柑橘類、測定法はそれぞれ異なりますので、数字を単純に比較はできませんし、今回の測定値はあくまでもその論文の中でのデータであって、すべての同じ品種の果物が同じようであるわけではありませんのでご注意下さい。


柑橘類の果実(果汁)および果皮中のフラノクマリン含有量(測定値)

下記文献より引用構成(引用間違いを発見されましたらお知らせ下さい)

[文献1] Masuda M et al. J Clin Pharm Ther 43:15, 2018

[文献2] 斎田哲也,藤戸博:医療薬学32(7),693,2006

DHB: 6',7'-dihydroxybergamottin

BG: bergamottin


いや、これ↑苦労して貼ったわりには画像がうまく貼れてるのかわからんのだけれども(汗)

簡単に言ってしまえば、河内晩柑もフラノクマリンをそこそこ含む柑橘類なので、要注意😐ということですね。

あと、柑橘類の「皮」は結構フラノクマリンを多く含んでますね。なのでお菓子とかマーマレードとかも要注意。

なお、フラノクマリン(DHB, BG)が「いくつ以上」ある場合に薬と一緒に飲み食いしちゃいけないのか、という問題は、それこそ果物の差、測定法の違い、薬の違い、それに飲む側のヒトの違いなどもあるので、一概に例えば「0.1以上だったらだめで、それ以下はだめ」などと言うことはできません。とは言え、もちろん、食べるならなるべくフラノクマリンの少ない柑橘類を注意して食べるようにした方がよいかと思いますが、主治医や薬剤師に必ず確認してください。

なお、表の中で、文献1・文献2の両方で、フラノクマリン「検出せず」だったのは

温州ミカン

でした🍊。あと、レモンも実験的には「相互作用は見られなかった」という報告があるようなので、文献1では、「ブンタンより多くDHBを含む柑橘類はCYP3A4阻害による相互作用を生じるおそれが高く、レモンよりDHBが少ないものは大丈夫だろう」と述べていますが、上記のように、相互作用(副作用)が出るかどうかは柑橘それぞれ、人それぞれ(=なんか演歌の題名みたいなことを言ってしまった)。くれぐれもご注意の上で、可能な範囲で、おいしい柑橘類を堪能して下さいね。






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