興味深い論文を読んだ。
「夜、寝る前にアロマをかぐことを続けると、中高年者の記憶機能が改善する」という研究結果である。
Woo CC, et al.
Overnight olfactory enrichment using an odorant diffuser improves memory and modifies the uncinate fasciculus in older adults.
Front Neurosci. 2023;17:1200448
アメリカ、カリフォルニア大学からの報告で、実験方法の概略は以下の通り。
・研究参加者は男女43名(年齢60-85歳)
・アロマの香りを嗅ぐグループと対照群とにランダム振り分け
・アロマ群は、アロマディフューザーを使って、1週間連日、それぞれ異なる7つの異なる香りを毎夜2時間ずつ嗅ぐ
・対照群は、香りが最小限しかないアロマ(って言っていいものなのか?)を同様に嗅ぐ
・それぞれのグループで、神経心理学的評価と、fMRIによる画像評価を、実験開始時と6カ月後に実施
という、実験としてはシンプルな系である。
その結果、
アロマ香り群の方が、対照群と比較して、
なんと226%(!)、Ray聴覚言語性学習検査(RAVLT:近時記憶の評価)が改善しており、また脳の鉤状束(前頭葉と側頭葉をつなぐ連合線維)の機能の改善が認められたという。
嗅覚と認知症との関連については、これまでに多くの報告がある。例えば、
嗅覚を刺激して認知症予防!「においと認知症」の最新研究成果 2016年5月23日[認知症ネット]
という報告があり、それに基づいてブレンドされたアロマオイルが販売されていたりする。
ではあるが、今回の論文では、別にオイルをブレンドなどしていない。
論文によれば、使ったアロマオイルはローズ、オレンジ、ユーカリプタス、レモン、ペパーミント、ローズマリー、ラベンダーだそうなので、そのへんのアロマ屋さん(っていうのか)で一般的に売っている、いわゆるベーシックな(値段が安い方の)香りばかりだ。
多分、要は(寝る前に心地よく嗅げる香りであれば)なんでもいいのだろうな、と想像するが、ここで例えば「キムチの香り」とか「シュールストレミングの香り」とかのアロマだったらどうなのかについては今後のさらなる検討が必要である(そんなアロマオイルがあるのかどうかについては言及しない)。
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