2023年1月13日金曜日

免疫疾患患者と帯状疱疹ワクチン

最近、帯状疱疹ワクチンの接種を希望して外来に来られる方が増えている印象である。

帯状疱疹を予防するワクチンには、弱毒生ワクチンと組み換えサブユニットワクチンがある。このうち生ワクチンは、なんらかの免疫不全状態にあったり、免疫を抑制する治療を受けていたりする方には使用できないが、組み換えサブユニットワクチンはそのような方にも接種することができる。

しかし、

免疫抑制の状態にある方が予防接種を受けたら、もともとの病気がワクチンの影響を受けて悪くなるのでは?

・・・という疑問を検討した論文があったのでざっと読んでみた。

Leung J, Anderson TC, Dooling K, Xie F, Curtis JR. Recombinant Zoster Vaccine Uptake and Risk of Flares Among Older Adults With Immune-Mediated Inflammatory Diseases in the US. Arthritis Rheumatol. 2022;74(11):1833-1841.

Recombinant Zoster Vaccine Uptake and Risk of Flares Among Older Adults With Immune-Mediated Inflammatory Diseases in the US

「米国における、免疫介在性炎症疾患を有する高齢者での、組み換え帯状疱疹ワクチンの接種と疾病再燃リスク」という論文。

免疫が関わる炎症性疾患*を持つ50歳以上の患者さんが、組み替え帯状疱疹ワクチン(シングリックス)接種後6週間の間に、元の疾患の再燃(入院や救急外来受診、またはステロイド投与)を生じたかどうかについて、2018-2019年のデータベースを元に解析した。

*この研究においてエントリーされた疾患:関節リウマチ、強直性脊椎炎、体軸性脊椎関節炎、関節症性乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬

2つのデータベースと、リウマチ科、消化器科、皮膚科合わせて上記疾患(いずれも免疫抑制療法の対象となる疾患である)合計数万人規模の解析である。


結果は、

疾患や年齢によらず、帯状疱疹ワクチン接種前後で、免疫疾患の再燃に有意な違いは見られなかった。

という、シンプルなメッセージであった。


免疫の異常から炎症が起こる疾患を持っている方でも、帯状疱疹ワクチン(シングリックス)の接種によって、それが明らかに悪くなるとか、落ち着いていた症状が再燃するとかいうリスクは、ほぼ心配しなくて良いということだ。

逆に、こういった疾患の患者さんは、免疫反応を抑える薬を使っていることが多いので、帯状疱疹になる(水痘・帯状疱疹ウイルスに感染する)リスクや、その重症化のリスクはある程度高いと思って予防しておく必要がある。

なので、ワクチンによる帯状疱疹の予防について、主治医と相談の上で前向きに検討していただければと思う。

もちろん、そういった疾患がなくても、50歳をめどに帯状疱疹の予防をお勧めしたいと思う。帯状疱疹というのは、かなり大変な感染症であるから。

どうぞ主治医にご相談下さい。




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